教育
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オムニバスセミナー 2021(R3)

開催日

2021/11/19(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 水藤 寛 (東北大学 材料科学高等研究所 教授)
講演題目

臨床医学と数学・物理学の関わり

要旨

血液の流れや脳脊髄液の流れなど、体内の様々な流れは生体の活動に重要な役割を果たしています。特に心血管系の病気の場合は、血液の流れの構造や血管壁に及ぼす応力の分布を知ることは、予後予測に重要な役割を果たします。また近年では手術前の検討の一環としていくつかの術後形状を想定した比較シミュレーションなども行われ、治療・手術方針の決定に関わるようになってきています。この講演では、そこに現れる様々数学的ツールを紹介し、数学と物理学がそこにどのように関わっているのかを述べたいと思います。
まず、外からは見えない体内の構造を知るために、CTやMRIなどの機器が用いられます。それらは、いろいろな方向から放射線をあてた画像や、波数空間で測定されたデータの集合体ですから、それらを用いて検討対象とする臓器の三次元の形状を再構成するには、様々な数理的ツールが必要です。次にそれを用いて血流などのシミュレーションをするには、基礎方程式の解の存在などの性質から離散化を経てプログラミングなどの計算機科学、線形代数の言葉で表現される数百万次元の大規模連立一次方程式の高速解法など、様々な数学が必要となります。また、数字の羅列である計算結果を理解するためには、コンピュータグラフィックスの技術も欠かせません。
臨床医学と数学・物理学がどのようにコラボしているか、それによって何が生み出されつつあるのか、の一端をご紹介したいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2021/10/22(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 竹下大学
(All-America Selections Breeder’s Cup 初代受賞者/キリンホールディングス(株)経営企画部健康事業推進室)
講演題目

植物の品種改良から学ぶイノベーションとキャリアデザイン

要旨

身の回りで植物の存在を意識するのはどんな時ですか?
「酸素を吸っている時!」と答えてくれる人がいたら感激してしまいますが、きっとそんな人は皆無でしょう。でも少し気にしてみれば、衣食住すべての場面で植物がたくさん使われていることに気づくはずです。そしてそれらの植物の多くは、人類が栽培し人類が改良してきた園芸品種なのです。少し調べてみれば、野生種(原種)そのものが利用されている例の少なさに驚くかもしれません。
でも今から100年前、エジソンが大活躍していた頃、品種改良はまだイノベーションだと世の中に認められていませんでした。ダーウィン、メンデル、バーバンクの話を皮切りに、日本における農作物の品種改良の歴史を振り返り、私たちの食生活がどのようにして豊かになってきたのか、その背景を探ります。
最後は、植物の潜在能力を発揮させる仕事である植物育種の視点から、私たち一人ひとりの才能の磨き方について一緒に考えてみましょう。
宿題としてひとつ考えてきてほしいことがあります。
「私にとって千葉大学は〇〇〇〇である」
〇〇〇〇を埋めてきてください。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2021/10/15(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 須田利美(東北大学・電子光理学研究センター センター長/教授)
講演題目

陽子のサイズがおかしい?

要旨

水素原子の原子核である陽子の大きさをめぐる謎についてお話します。
水素や陽子は、その発見以来現在に至るまで現代物理学の重要な研究対象です。水素原子の分光研究から「量子力学」が発見され、また「量子電磁気学」確立の際には水素原子は実験室としての役割を果たしました。1950年代に陽子が大きさを持つことが発見されると、その内部構造研究からクォークが発見され「量子色力学」が確立しました。そして現在でも、最先端の高エネルギー加速器施設では陽子内部構造の詳細な研究が進行中です。
このように長年現代物理学の主要な研究対象であった陽子の大きさ(電荷半径)がおかしいと指摘する論文が2010年に発表されました。従来の電子を利用した陽子半径値と、ミュー粒子で測定された値が深刻な不一致を示すというのです。大きさは最も基本的な物理量であるためこの指摘は大きな驚きで迎えられ、「陽子大きさの謎」と呼ばれる事態になりました。更にこの問題は、素粒子物理学や原子核物理そして原子物理学という広い研究分野に大きな影響を与える可能性があるため、世界中の研究者がその原因究明そして真の陽子の半径決定に取り組んでいます。近年複数の新測定が行われその結果が発表されつつありますが、いまだに陽子の大きさの問題は解決していません。
講義では、「陽子サイズ問題」の現状やその意味すること、そして東北大での新しい研究計画を含め世界の研究の状況を紹介します。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2021/7/30(金)

時間帯 14:30-16:00
講師 米村千代 (千葉大学大学院人文科学研究院 教授)
講演題目

日本の家族変動における「家」

要旨

皆さんは「家」と聞いて何を思い浮かべますか。ここでいう「家」とは建物としての家ではなく、日本の家族研究において、戦前の家族制度や‘伝統’家族とされてきた家族を指します。と、言われても全くリアリティがない人もいるかもしれませんが、冠婚葬祭の場で、たとえば結婚式やお葬式の折に「○○家」と表記されているのを見たことはありませんか。お墓参りに行った際、墓石に「○○家之墓」と刻まれているのを目にしたことはあるのではないでしょうか。
「家」とは何か。このテーマに関して、私が専門にしている社会学に限らず、 人文社会科学において膨大な研究蓄積があり、多くの論争が繰り広げられてきました。家族という関係性は、人々の生活や生存を支える重要な関係性とされていますが、それが故に、人々の感情や利害が時に鋭く対立する場でもあります。そして人々は、自らが生まれてくる家族を選べないという宿命性も追っています。「家」の研究史の先に、現代の家族が内包するこうした問題やこれからの家族のあり方について考えることが今回の主題です。
セミナーのなかでは、なぜ、自分が家族を研究しようと思ったのか、特に、家族研究のなかでも「家」をテーマとしたのか、社会学という学問を研究すること等についてもお話しする予定です。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2021/6/25(金)

時間帯 16:10-17:40
講師

尾松孝茂

(千葉大学大学院工学研究科 教授/分子キラリティー研究センター センター長)

講演題目

光で物質を捩じる

要旨

物質の「キラリティー」は長い歴史と普遍的な魅力を持つテーマです。光にも「キラリティー」があります。その歴史はわずかに30年です。ここ数年、光の「キラリティー」は物質科学の研究テーマの一つとしてすっかり定着しました。
そこには、千葉大学の多大な貢献があります。
本講演では、キラルな光が物質を捩じるという現象の原理、現象を発見したエピソード、さらには、今後の展望についてお話します。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2021/5/14(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 土松隆志 (東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 准教授)
講演題目

植物の適応戦略をゲノムから探る

要旨

地球上には記載されているだけで数百万種に及ぶ生物が知られており、生育環境に適応して著しく多様な形や性質を進化させてきた。生物は単一の祖先からどのように多様化してきたのか。また、生育環境に適応した巧みな性質はどのように進化してきたのか。生物の進化を理解するにあたり重要な手がかりになるのが、ゲノム(全遺伝情報)のデータである。ゲノムは、形質を発現するための生命の設計図であるだけでなく、自然選択など進化の過程のさまざまな痕跡が刻まれている。塩基配列決定技術の飛躍的な進展もあり、多くの生物種で全ゲノム情報を得ることは近年かなり容易になってきた。セミナーでは特に、植物の生殖に関する性質の進化をゲノム情報を駆使して理解する試みを紹介するほか、学生時代から現在に至るまでの私自身のキャリアパスなどについてもお話したい。

会場 オンライン開催となりました。参加希望の方は こちら よりお申込みください。(どなたでもご参加いただけます)
物理会議室(理学部2号館3階)※オンライン開催になる可能性もあります

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