オムニバスセミナー 2024(R6)
開催日 | 2024/11/15(金) |
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時間帯 | 16:10-17:40 |
講師 | 近藤 昭彦 氏 (神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 教授) |
講演題目 | バイオ・デジタル融合によるバイオものづくり革命の推進 |
要旨 | バイオテクノロジーを利用した経済「バイオエコノミー」が、ものづくり、健康医療、農業等の幅広い分野で急拡大している。中でも、バイオテクノロジーを活用したものづくり“バイオものづくり”は飛躍的な発展を遂げつつあり、バイオものづくり革命の様相を呈している。このバイオものづくり革命の流れを加速しているのが、ゲノム解読技術やゲノム合成・編集技術等の先端バイオ技術とIT、AI技術、ロボット技術や革新的なプロセス工学技術を融合(「バイオ・デジタル」融合)して誕生した、技術分野Engineering Biologyであり、各種要素技術を集積した革新的な“バイオファウンドリ技術”です。私は、15年以上にわたりEngineering Biologyやバイオファウンドリに関する基盤技術開発を進めてきましたが、様々な科学技術を融合する挑戦です。 折しも、2022年9月に、米国では大統領令でBiotechnology and Biomanufacturingの抜本的な強化がうたわれ、その中で、技術基盤となるEngineering Biologyは、4500兆円を超えるインパクトとなると明記されています。日本でも、2022年6月に発表された“骨太の方針”で、バイオものづくりが、科学技術における重点分野に設定されました。そして、グリーンイノベーション基金で、CO2からのバイオものづくりに約1700億円、バイオものづくり革命推進事業で、廃棄物等の未利用資源からのバイオものづくりに3000億円の基金予算が成立し、重要な二つの領域の研究が強力に推進されることとなりました。こうした新しい分野を、強力に推進して社会課題を解決するためには、スタートアップが重要な役割を演じます。私は、大学での研究成果を移転して、バッカス・バイオイノベーション社をはじめとする6社のスタートアップ企業を設立しましたが、多くの大学と連携して革新的な技術の社会実装を進めています。大学での基盤研究をいかに社会変革につなげていくか、私の挑戦に関しても紹介したい。 |
会場 | 物理会議室(理学部2号館3階) |
記録 | 講義ビデオ |
開催日 | 2024/7/5(金) |
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時間帯 | 16:10-17:40 |
講師 | 森 慎一郎 氏 (量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所 治療システム開発グループ グループリーダ) |
講演題目 | 理工学と医学の融合:医学物理学が拓く新しいがん治療の可能性 |
要旨 | 現代医学は、科学技術のめざましい進歩により、生命科学のみならず、理学や工学といった異なる領域からも研究が行われ、以前にも増して臨床に対する期待や新たな可能性が高まりつつあります。本講演では、放射線がん治療の分野に焦点を当てます。放射線がん治療は、放射線腫瘍医、医学物理士、放射線技師が密接に連携して臨床治療を進めています。これは、放射線治療が医学、物理工学、生物学という異なる学術分野の上に成り立っているためです。物理工学の技術進歩により、治療用放射線を腫瘍により集中させ、正常組織への被ばくを低減させる技術が発展してきました。これにより、患者の副作用を大幅に減少させ、治療成績を向上させることに大いに貢献しています。「患者の病気を治療するのは医学者だけ」と考える時代は過ぎ去り、今後の医療には、様々な分野の知識の融合が重要であり、これを実践できる人材が求められています。多くの場合、医療に携わる仕事に就かない限り、この事実に気付くのは大学を卒業してからです。そのきっかけとして、本人や身内、大切な人が「がん」に罹患することがあるかもしれません。本講演では、「理工系の知識で患者を救える、医療に貢献できる人材になれる」ことを大学生に伝えたいと思います。理工学の技術がどのようにして医療に役立つのか、具体的な事例や最新の研究成果を紹介し、将来「医療へ貢献する」仕事に就く学生が増えることを期待しています。私の今までの経験を通して、医学物理学を紹介し、皆さんが興味を持てるような内容としました。 |
会場 | 物理会議室(理学部2号館3階) |
開催日 | 2024/6/7(金) |
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時間帯 | 16:10-17:40 |
講師 | 小野田 慶一 氏 (追手門学院大学心理学部 教授) |
講演題目 | 意識はどこから? |
要旨 | 意識は古くから哲学領域の対象とみなされていましたが,近年の神経科学技術の進歩と情報理論の進展により,科学の正当な研究対象とみなされるようになっています。意識がどのような脳のメカニズムにより創発されるかに関して多数の理論が提案されていますが,その議論は解決されていません。ここでは私が意識研究に興味をもった経緯をお話するとともに,統合情報理論にもとづく研究を紹介します。 統合情報理論は,意識の現象学的性質を出発点とする数学的な公理系となっています。意識の基本的な性質は「情報」と「統合」であるとし,あるシステムが意識をもつためにはその内部で情報が統合されていなければならないとしています。このシステム内部で統合された情報の量を「統合情報量Φ」という指標で定義し,この量が意識の量的側面に対応するという仮説を提唱しています。さらにシステム内で最も高い統合情報量Φをもつ要素の組み合わせをComplexという概念で定義し,意識のコアに対応するとしています。統合情報量ΦやComplexはシステムの活動状態を示す時系列データから算出可能です。この理論によれば,睡眠や麻酔により意識が消失したとき統合情報量Φは低下し,その状態から回復し意識を取り戻したときΦはベースラインまで復帰すると予測されます。また,こうした変化はComplexに含まれる脳領域で顕著に現れると予測されます。これらの予測をfMRIデータで検証した研究をお話いたします。 |
会場 | 物理会議室(理学部2号館3階) |
記録 | 講義ビデオ |
開催日 | 2024/5/17(金) |
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時間帯 | 16:10-17:40 |
講師 | 矢貝 史樹 氏 (千葉大学 国際高等研究基幹/大学院工学研究院 教授) |
講演題目 | 超分子化学に魅せられて 〜小さな発見を大きな発見にできることが研究の醍醐味〜 |
要旨 | 「超分子化学」と呼ばれる、分子が集まることで分子を超えた分子が作られる仕組みを学ぶことができる学問分野があります。超分子化学の概念が生まれてから30年以上経ちましたが、この概念は今では生命科学から材料化学まで広範な研究分野の基盤となる学問となっています。超分子化学の研究分野で、生体がさまざまな分子を組み合わせて成し遂げている生体機能を人工分子を用いてフラスコの中で再現する生体模倣と呼ばれる研究や、分子が自発的に集合してあらゆる材料を造る際に駆動力となる分子と分子の相互作用を理解する研究、そしてそれらの相互作用を制御して新しい材料を造る研究といった、多様な研究スタイルがあります。私の研究室では、何万という分子を集めて世界で誰も作ったことがないような複雑な微小構造を作り、その性質を調べるという独自の研究を行なっています。例えば、数万分子が集まって、オリンピックのシンボルマークのような五輪構造を作ることができました。この研究のきっかけはちょっとした思わぬ発見が発端でした。そういった小さな発見を深く掘り下げることで、時には全く新しい概念や技術を含んだ大きな発見を導くことができ、この時に味わうことができる達成感が基礎研究の醍醐味です。研究していると困難な場面に直面することも多々ありますが、この達成感を一回味わうと、また味わいたくなり、そしていつの間にか研究者の道を歩むようになっていた、という研究者は多いと思います。そんな一例として本講義を聞いていただければと思います。 |
会場 | 物理会議室(理学部2号館3階) |
記録 | 講義ビデオ |
開催日 | 2024/5/10(金) |
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時間帯 | 16:10-17:40 |
講師 | 森脇 可奈 氏 (東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 助教) |
講演題目 | AI技術を取り入れた宇宙の研究 |
要旨 | 我々の住む銀河や宇宙はどのような姿をしていて、どのような進化を遂げてきたのか。私は、このような疑問に答えるための研究をしています。 宇宙空間において、物質や銀河は特徴的な分布の仕方をしていることが知られています。それらのなす構造は宇宙大規模構造と呼ばれ、宇宙の進化を理解する上で非常に重要となります。私の研究では、こうした宇宙大規模構造や銀河の進化史を詳細に探ることを目標としています。 特に最近は、AIの技術を駆使して研究を進めています。例えば、深層学習を用いて観測データからノイズを取り除き、遠方(過去)の宇宙大規模構造の姿をより鮮明に得る手法を開発したり、深層学習と数値シミュレーションを組み合わせて我々の住む銀河がどのように進化してきたのかについて理解しようと試みています。本講演では、こうした研究について紹介するとともに、天文・宇宙物理学の分野でAI の発展がどのように影響を及ぼしているかについて、自身の経験に基づきながらお話ししたいと思います。 |
会場 | 物理会議室(理学部2号館3階) |
記録 | 講義ビデオ |