飛び入学
Early Admission

先輩からのメッセージ 2021年度 ― 研究者、科学者、起業家として活躍 ―

先進科学プログラムに飛び入学した学生は、選んだクラスに該当する学部・学科(理学部、工学部、園芸学部、文学部)に所属し、それぞれが定められた学士課程のカリキュラムを履修しますが、それに加え、先進科学プログラム独自のセミナーや研修に参加し、専任の指導教員のもとで研究者への道を歩んでいきます。

千葉大、東大、ピッツバーグ大、ハワイ大を経て、インディアナ大の言語学研究者に

田中 望さん

インディアナ大学グローバル国際学部テニュアトラック助教。

プロフィール

2005年、人間探究コースに飛び入学。3つの大学院を経て現職。専門は言語学

なぜ、「飛び入学」に?

フィリピンで生まれ、中学校までを多言語環境で育ちました。高校は日本の公立高校に入学し、普通に受験するつもりでいましたが、日本での高校生活になじめない私の様子を見て両親が勧めてくれたのが千葉大の飛び入学です。高校卒業後に進学を考えていた大学もあったのですが、飛び入学は受験のチャンスが増えるだけで失うものはないと考え、トライしてみることにしました。受験のために大学を訪れて、他の受験生や先生方と接するうちに、先進科学プログラムの魅力を感じ、ここで学びたいという気持ちが強くなりました。

先進科学プログラムについて

文理融合分野で学びたいと考えていたので「人間探究コース」に入学。先進科学プログラムでの生活を思い返して浮かんでくるのは学生室やセミナーです。専用の勉強場所や先進生だけのセミナーを通して先輩とも同期とも(そして後には後輩とも)触れ合う機会があったこと、学びのコミュニティを作るという点では魅力的で、千葉大というマンモス校の中で居場所がある安心感がありました。個性的な人も多かったですが、それが逆に心地よかったですし、困ったことや疑問があればみんな進んで助けてくれました。

教授との距離が近かったのも魅力的で、面接のときのことを覚えている先生も多く、入学すぐに奨学金に応募したときに推薦状を書いていただくなどお世話になりました。研究室が決まるより先に、学部1、2年生の早い時期から少人数セミナーや早期研究の機会を通して学科の先生や先進の先生と触れ合えたのはとても貴重で、そのおかげで、自分の興味を発展させることができました。初の学会発表をさせていただいたのも学部生の頃でしたし、大学院進学のときにも、英語の志願書を見ていただいたり、推薦状を書いていただくなど、いろいろな先生にお世話になりました。特に、自分が教鞭に立つ側になって、大学院生と比べてやっぱり学部生との距離は遠いと感じるので、あらためて本当にすごいことだなと思います。

そしてもちろん、学部在学中の海外への留学経験も、私にとってはその後の人生を変える大きなきっかけとなりました。フィリピン生まれの私にとって、日本の大学で学ぶことがすでに「留学」のようなものでしたので、さらに外国に行くことは考えてもいませんでした。しかし、サンノゼ州立大学での研修に参加し、現地の授業を聴講して積極的に発言する学生を見ておおいに刺激を受けました。現地の先生方と親しくさせていただき、3年次には大学院の下見も兼ねて現地を再訪。このような経験を通してアメリカがぐっと近くなり、アメリカの大学院に進もうと考えるようになりました。

研究分野

人間探求コース(行動科学)を選んだ当時は言語について勉強する・研究するということは考えておらず、言語学ということがあることも知りませんでしたが、行動科学をはじめ、学部でのさまざまな授業を通して学問として追究したいと思うようになりました。いったんは東京大学に進学しましたが、その後、奨学金付きで修士課程に受け入れてくれることが決まったピッツバーグ大学に進学しました。

私の研究は一般的に「言語習得」と呼ばれている分野です。人間は生まれた頃から(あるいはお母さんのお腹の中にいる頃から)自分のいる環境で話されている言語を学び、通常、小学校に上がるまでには(読み書きはまだでも)一人前に自分の母語が話せるようになります。この過程自体は人類共通・世界共通ですが、最終的にできあがったものは、言語によってパターンも文法も違いますし、同じ言語でも個人や環境によっても変わります。複数の言語を同時に学ぶこともあります。成長してから外国語を学ぶこともあります。一度習った言語を忘れてしまうこともあります。

いろいろなシナリオを見ながら、言語のどこまでが「人類共通」と言えるのか、という点に興味があります。この質問自体は、社会的な意義というよりも、種としての人間について言語はどういう存在か、という本質に迫った質問になると思います。

後進へのアドバイス

飛び入学(先進科学プログラム)は、熱心な学生や先生方に囲まれて勉強することができる、とても魅力的な場所です。先生方はあなたの将来について真剣に考えてくれ、協力してくれます。私もまずは「トライしてみよう」というところから始まりました。少しでも興味があるなら、受験してみることをおすすめします。きっと新しい扉が開かれると思います。

 

求人検索サイトのアルゴリズムを最適化して、誰もが生きやすい社会を作る

大杉 直也さん

株式会社リクルート
検索ソリューショングループ/グループマネジャー

プロフィール

2005年、人間探究コースに飛び入学。2009年、奈良先端科学技術大学院大学情報科学科(博士前期課程、理学修士)に入学、2011年東京大学大学院総合文化研究科(博士後期課程、単位取得満期退学)。2014年株式会社リクルートホールディングス(現、リクルート)に入社し、現在に至る。

なぜ、「飛び入学」に?

高校での勉強はどうしても大学受験をゴールとして考えがち。もっと本質的なこと、興味関心が持てることに取り組みたいという思いから、飛び入学に挑戦しました。

先進科学プログラムについて

入学して感じたのは、優秀な仲間たちとの議論の楽しさ。理学部や工学部などの学生と一緒に、物理も数学も哲学も好きなだけ時間をかけて学びを広げていくことができました。また、大学の先生方の「研究の姿勢」にも刺激を受けました。大学での「研究」というのは、答えがわからないからやるもの。当時指導していただいた先生は、「どうやったらこの研究は成立するのか」「この答えは本当に正しいのか」と常に悩んでいて、その姿から「研究とはいかにあるべきか」を学びました。

今になって強く感じるのは、学部時代の広い学びがとても貴重だということ。知識を広げていく中で、自分が進みたい分野が見えてきます。私の場合は、人間の行動に興味があって「人間探究コース」を選んだのですが、人間の行動を理解するには、情報工学や統計学の必要性を感じるようになり、大学院は、奈良先端科学技術大学院大学の情報科学科へ進みました。修士号取得後、東京大学大学院総合文化研究科の博士課程では機械学習について研究を重ねました。博士課程を修了する時点で、統計学や機械学習を研究する道に進もうと決めていたのですが、そのために、実社会に直接接しながら、研究対象となるデータを方墳に扱える情報産業で働くこと方が、自分には適していると考え、民間企業への就職を決めました。

現在の仕事は?

現在は、情報検索サイトのアルゴリズムを開発する仕事をしています。めざしているのは、多くの人がもっと幸せに生きていける社会を実現すること。衣食住が高いレベルで満たされつつあるのに対し、「好きなこと」「やりたいこと」を生業としている人は少ないように感じます。新しい働き方なのか、新しい仕事の在り方なのかわかりませんが、求人情報の検索サイトには、その可能性を探るための情報が無限にあります。「こういう問いを立てたら、こういう結果が出るはず」という仮説をもとにアルゴリズムを組み立て、システムを開発している仕事は、大学時代に学んだ行動科学の研究のプロセスそのものです。こういった科学的な課題解決のスキルは、今日のビジネスの世界では欠かせないものになっています。仕事をする中で新しい知見が必要になれば、また大学で学ぶこともあるでしょうし、逆に、ビジネスの現場で得た知見を教育や研究の場に還元する機会もあるはずだと考えています。

後進へのアドバイス

高校生活にはいろいろな意味があると思います。部活、文化祭、修学旅行など、高校生活そのものに意義を感じる人もいるでしょう。一方、学問的に見ると、数学はこの範囲、物理はここまで、と履修範囲が制限されて学問の本質にとどかないことが多い。そのうえ、大学受験という仮のゴールに向けた受験勉強も必要となります。私はその中途半端さから抜け出したくて「飛び入学」を選びました。好きなことを思う存分学びたいなら、「飛び入学」に挑戦しない理由はない! と私は思います。

(2021年7月現在)

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