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意識はどこから?

開催日 2024/6/7(金)
時間帯 16:10-17:40
講師

小野田 慶一 氏 (追手門学院大学心理学部 教授)

講演題目 意識はどこから?
要旨 意識は古くから哲学領域の対象とみなされていましたが,近年の神経科学技術の進歩と情報理論の進展により,科学の正当な研究対象とみなされるようになっています。意識がどのような脳のメカニズムにより創発されるかに関して多数の理論が提案されていますが,その議論は解決されていません。ここでは私が意識研究に興味をもった経緯をお話するとともに,統合情報理論にもとづく研究を紹介します。

統合情報理論は,意識の現象学的性質を出発点とする数学的な公理系となっています。意識の基本的な性質は「情報」と「統合」であるとし,あるシステムが意識をもつためにはその内部で情報が統合されていなければならないとしています。このシステム内部で統合された情報の量を「統合情報量Φ」という指標で定義し,この量が意識の量的側面に対応するという仮説を提唱しています。さらにシステム内で最も高い統合情報量Φをもつ要素の組み合わせをComplexという概念で定義し,意識のコアに対応するとしています。統合情報量ΦやComplexはシステムの活動状態を示す時系列データから算出可能です。この理論によれば,睡眠や麻酔により意識が消失したとき統合情報量Φは低下し,その状態から回復し意識を取り戻したときΦはベースラインまで復帰すると予測されます。また,こうした変化はComplexに含まれる脳領域で顕著に現れると予測されます。これらの予測をfMRIデータで検証した研究をお話いたします。
会場 物理会議室(理学部2号館3階)
記録

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