CFS_bro_2020
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①概日リズムは細胞核の中で作られ、シグマ因子によって葉緑体に伝達される ②トマトの赤や黄色などの色素体はどのようにしてできあがったのか。多様な色素体の分化機構を解明する ③色素体機能に関わる遺伝子は、色素体自身からのシグナルによって制御されているらしいということがわかってきた。①肝臓の血管のMRI元画像 ②造影像と透視像を差分することで血管像を生成したDSA画像 ③マルチモーダルによる解析画像最先端の研究へ「飛び入学」6◎体内時計を葉緑体に伝えているのは 「シグマ因子」だった 概日リズム(circadian rhythm サーカディアン・リズム)は、さまざまな生命活動が24時間周期で行われるシステムのことで、一般的に「体内時計」といわれているもの。これは人間だけではなく、植物や菌類など多くの生物に備わっており、光合成や代謝などさまざまな機能が1日の中で最適な時間帯に起こるよう調節しています。この「概日リズム」を作るために機能する遺伝子は「時計遺伝子」と呼ばれ細胞核にあることがわかっています。 植物の場合、光合成能や生産力の向上において概日リズムは重要な役割を果たしますが、核を中心に作られた概日リズムの情報がどのようにして葉緑体に伝えられているかは長らく謎とされてきました。2013年、私たちは、東京工業大学、英国ブリストル大学等との共同研究によって、「シグマ因子」と呼ばれるDNAの転写に関わるタンパク質が時間情報の伝達に関わっていることを突き止め、米国科学雑誌「Science」に発表しました。 地球上の全ての生命は、葉緑体の光合成機能により支えられています。葉緑体機能を正確に構築・維持するためには、常に核や他の細胞小器官との連携(クロストーク)が必要です。私達の研究室では、光や概日時計に応答した遺伝子発現調節や細胞内シグナル伝達機構について研究を進め、その仕組みを利用して食料問題・環境問題の解決を目指していきます。 これから科学を学ぶ若い頭脳の参加を期待しています。1985年電気通信大学卒。1990年東京工業大学大学院博士課程修了。工学博士。1990年から千葉大学に助手として着任し、2007年教授、2017年よりフロンティア医工学センター長。日本医用画像工学会副会長、第35回日本医用画像工学会大会長(2016年)。最先端の研究へ「飛び入学」◎医療を変える「高次元画像解析」 体内の様子を調べるためには、X線を利用するCT、磁気を使うMRI、超音波を使うエコー診断など、さまざまな診断装置(モダリティ)が使われています。これらさまざまなモダリティの組み合わせや各種画像の高次元解析によって、医療に役立てる研究を行っています。 高次元画像解析の例として、動きや流れの可視化や分析があります。例えば臓器にくまなくめぐらされた血管を画像化する技術がそれです。右の画像はX線透視撮影装置によって肝臓内の血管を可視化したものです。左端や中央の画像では骨や呼吸などの影響で血管が明瞭ではありませんが、本プロジェクトでは、動きがあっても影響を受けない方法を開発し、右端の画像のようにくっきりした血管像が得られるようになりました。他にも肺の動きを解析する4次元MRI技術を開発し、病院で試用しています。 医工学の研究分野は、既存の医療機器の改良など堅実な研究開発の積み重ねで医療に貢献できる一方で、CTやMRIなど、まったく新しい技術の発明によって、ドラマチックな医療技術の進歩にも寄与できる面も持ち合わせています。 CT、MRIの発明者はノーベル賞を受賞しています。ノーベル賞級の研究者を目指すもよし、堅実な技術者として高度医療に発展に尽くすもよし。先進科学プログラムは、そういった研究分野にいち早く取り組むチャンスでもあります。これによって高精度な診断や治療が可能になります。フロンティア医工学センター高次元医用画像解析5羽石 秀昭千葉大学 フロンティア医工学センターセンター長・教授医工学51CTやMRIの解析技術で、高精度で低侵襲な診断・治療を実現する1998年京都大学総合人間学部卒。2000年、京都大学大学院人間・環境学研究科(修士)、2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了(博士)。日本学術振興会特別研究員、JST CREST研究員などを歴任。2019年より現職。分子生体機能学研究室華岡光正千葉大学大学院園芸学研究科 教授応用生命化学植物生命科学生物の概日リズム(体内時計)が働く仕組みを解明して、未来農法に生かす23column 2003年、医学・工学の枠を越えた医工学の研究機関として設立。これまでに、医用内視鏡や超音波診断装置に搭載される画像処理法、がん温熱治療用アンテナなど、さまざまな技術移転・製品化の実績をあげている。千葉大学フロンティア医工学センター123

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