CFS_bro_2020
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column千葉大学工学部情報工学科を経て、2002年同大学院自然科学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。東京工業大学大学院助手、九州工業大学大学院准教授、千葉大学統合情報センターならびに大学院融合科学研究科准教授を経て、現職。最先端の研究へ「飛び入学」3川本 一彦千葉大学大学院工学研究院 教授情報工学研究室コンピュータビジョン◎ディープラーニングで画像を解析する AI(人工知能)は、ここ数年で飛躍的な進歩を遂げています。ブレークスルーとなったのは、機械学習の一分野であるディープラーニング(深層学習)の発達です。私たちの研究室では、ディープラーニングを活用したコンピュータビジョンを研究しています。 コンピュータビジョンというのは、人間がもつ高度な視覚機能をコンピュータで実現するための研究分野。たくさんの画像や映像をコンピュータに見せて、コンピュータに学ばせます。学習したコンピュータは、人間にはまだまだおよばないものの、多くのことを理解できるようになりつつあり、多くの応用が考えられます。 たとえば、パンを取り出し、バターを塗り、ハムをはさんでサンドイッチを作る。この行動をAIが理解すると、次はサンドイッチの作り方を知らない人に対して、「パンを取り出しなさい」「バターを塗りなさい」…とアドバイスできるようになります。人間をサポートするだけでなく、ロボットそのものが自分の判断で行動できる範囲が広がっていくのです。 行動認識の技術が進むと、AIは、より人間に近い高度な判断ができるようになります。人の表情を読み取ったり、倒れているのか寝ているのかを認識したりもできるようになるので、医療や介護など、人と人との接点が必要とされ、機械化が難しいとされていたさまざまな分野への活用が期待できます。私たちの研究は、成果が目に見える形で瞬時に実感できるところが魅力。研究によって、AIに次のブレークスルーをもたらしていきたいですね。情報工学4コンピュータビジョンでAIに次のブレイクスルーをもたらす 2020年春から工学部総合工学科情報工学コースにおいて、日本情報オリンピックの予選の成績及び課題論述と2次面接による飛び入学生の受け入れを開始。ビッグデータ処理、人工知能などの最先端技術を身につけた高度IT人材を育成します。日本情報オリンピックを活用した飛び入学①ディープラーニングを利用した機械学習の概念図。AIの中でディープラーニングを行っているのは、人間の脳の仕組みをまねて作られた情報処理機構「ニューラルネットワーク」。図の左から入力されたデータをネットワーク内で処理して答えを出力する。ネットワーク自体が学習能力を持っているので、データ処理を繰り返すたびに「賢く」なっていき、答えの正確度が高まる②サンドイッチを作る映像の行動分析。サンドイッチを作る作業をウエアラブルカメラで撮影した映像をもとに行動分析を行う。パンを取り出し、バターを塗り、ハムをはさむという行為は、人間であれば子供にも教えられる簡単な作業だが、機械にとってはかなり高度な認知力が求められる。機械学習によって、正確に見極めができるようになった121992年 北海道大学 薬学部卒。1995年 東京大学大学院 薬学系研究科中退、博士(薬学)。同年 東京大学薬学部助手、1997年 大阪大学産業科学研究所助手、2003年 千葉大学理学部助教授を経て2010年から教授。最先端の研究へ「飛び入学」4荒井 孝義千葉大学大学院 理学研究院 教授ソフト分子活性化研究センター(SMARC)長千葉ヨウ素資源イノベーションセンター(CIRIC)長千葉ヨウ素資源イノベーションセンター有機合成化学column 千葉大学が千葉県と共に申請した「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター」Chiba IodineResource Innovation Center(CIRIC)は、平成28年度文部科学省「地域科学技術実証拠点整備事業」に採択されました。◎産官学が連携する最先端科学によって 高付加価値なヨウ素製品を開発・製造する 理科の実験で学んだ「ヨウ素反応」、消毒液の「ヨードチンキ」など、「ヨウ素」は私たちが身近に利用している元素のひとつです。濃いオレンジ色の液体として見慣れていますが、それだけではなく、さまざまな医薬品や化学製品の材料として使われる重要な物質です。その「ヨウ素」は日本が海外に輸出している貴重な元素であることをご存知でしょうか?生産量は南米のチリについで世界第2位。世界の約30%を占めています。そして、千葉県は国内生産量の75%を産出しています。  ところが、日本は、せっかくの産出国でありながら、その多くを製造原料の形で輸出してしまい、資源を十分活かしきれていないのが現状です。 そこで、千葉大学では、「日本の貴重な『ヨウ素』資源を活用するために、最先端科学で高付加価値のヨウ素製品を開発・製造する拠点が必要である」と考え、「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター(CIRIC)」を設立しました。 同センターでは、1)次世代太陽電池(ぺロブスカイト太陽電池)用ヨウ化鉛の安定供給、2)導電性に優れた 有機薄膜の創製、3)放射性ヨウ素薬剤によるがん診断・治療の新展開、4)新規造影剤合成法の開発、5)有機ヨウ素化合物を利用した高機能ポリマー創製などの多角的な産学連携課題を推進し、ヨウ素資源の高機能化を行います。化学CIRIC12千葉県産「ヨウ素」は、世界シェア21パーセントヨウ素(ヨード)は日本の数少ない天然資源(写真①)で、X線撮影に利用される造影剤をはじめ(写真②)、医療、工業、食品、農業などあらゆる産業で活用されている

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